「運動は気持ちがいいし、やれるものならたくさんやりたい」
「身体に良いしね」
昔は運動のやり過ぎなど考えたこともありませんでした。
でも、身体のしくみを知れば知るほど、それはちょっと違うなあ、と思うように。
特に、フルマラソンやウルトラマラソンのような、長い時間ずっと走り続ける運動。
でも「がんばるほど健康になる」とは、言い切れないんです。

むしろ、やりすぎると、身体を老けさせてしまうことさえあります。
今日はそのお話を、身体の中で何が起きているかから、ゆっくりしていきますね。
長い距離を走ると、血の中の赤血球が壊れていきます。
ひとつは、足の裏から。
足が地面を打つたびに、足裏の細い血管の中で、赤血球が押し潰されていくんです。
長い距離を走る人に貧血が多いのは、これが理由のひとつと言われています。
「走る=健康」のイメージからすると、意外ですよね。
もうひとつは、赤血球そのものが硬くなること。
赤血球って、本来はとてもやわらかいんです。
自分より細い血管を通るとき、折りたたむように形を変えて、通り抜けて、全身のすみずみに酸素を届けています。
ところが、過酷な走りが続くと、このあと出てくるサビの影響で、その膜が硬くなってしまう。
やわらかく形を変えられなくなると、細い血管を通れません。
つまり、酸素の配達が滞る。
これが、細胞のレベルでの「老け」につながっていきます。
次は、エネルギーの話です。
身体を動かす燃料には、大きく2種類あります。
きれいに燃える燃料(糖)と、煤(すす)を出しながら燃える燃料(脂肪)。
ふだんは、きれいに燃える糖を主に使っています。
でも、糖のタンクには限りがあって、何時間も走り続けると、途中で底をついてしまうんです。
糖が切れると、身体は脂肪を燃やし始めます。
ここで問題なのが、脂肪を大量に燃やすと、サビのもと(活性酸素)がたくさん出ること。
このサビが、細胞や赤血球の膜を酸化させていきます。
さっき「膜が硬くなる」と言ったのは、これのことなんです。
金属がサビて脆くなるのと、少し似ていますね。
しかも、長い時間がんばり続けると、ストレスホルモンも出っぱなしになります。
すると筋肉が分解されたり、一時的に免疫が下がって、走ったあとに風邪をひきやすくなったり。
走りきった達成感の裏で、身体の中ではけっこう消耗が起きているんです。
走るのは心臓にいい。
ほどほどなら、たしかにその通りです。
でも、度を超すと逆になることがある、と報告されています。
何時間も心拍を上げたままにすると、心臓(特に左上の部屋)が、ずっと引き伸ばされ続けます。
その負担で、壁が厚くなったり、組織が硬くなったり、脈が乱れやすくなったり(不整脈)することがあるんです。
おもしろいのは、運動と健康の関係が「Uの字」に近いこと。
まったく動かないのも、身体には良くない。
でも、限界を超えて動きすぎるのも、良くない。
いちばん健康に良いのは、その真ん中。
ちょうどいい量が、ちゃんとあるということなんですよね。

激しく走ったあとの、あの爽快感。
「ランナーズハイ」と呼ばれる、あれ。
実はあれ、健康になったサインではないんです。
強い痛みやストレスに耐えるために、脳が出している物質(エンドルフィンなど)による感覚。
言ってみれば、「身体が限界とたたかっている」しるしのほうなんです。
気持ちよかったから、身体にも良かったはず。
そう思いたくなるけれど、そこは分けて考えたほうがよさそうです。
ここまで、運動が悪いもののように聞こえたかもしれません。
でも、運動そのものを否定したいわけじゃないんです。
軽め〜中くらいの運動。
たとえばウォーキングや、ゆっくりめのジョギング。
「気持ちいいな」と感じられる範囲の運動は、生活習慣病の予防にも、老化のケアにも、とても良いと言われています。
苦しさに耐える運動と、心地よく続けられる運動。
同じ「運動」でも、身体の中で起きていることは、まるで違うんですよね。
健康のために動くなら、無理に長い距離を走らなくていい。
「気持ちいい」を目印に、毎日ちょこちょこ動く。
それがいちばん、理にかなっています。
「もっと、もっと」を少しゆるめて、「心地よく続く」に目を向けてみると良さそうですね。
「心地よく動ける身体」を、レッスンでも一緒に育てています。
気になったら、のぞいてみてくださいね。
こういう生理学的な学問も学びたい方はノリ塾で詳しくお伝えしますね。