
蝶形骨は、頭蓋骨の中心に位置する骨です。
蝶が羽を広げたような形をしており、前後左右に広がりながら
頭蓋を構成する多くの骨と立体的につながっています。
この骨は、単独で存在しているのではなく、
周囲の骨や膜、神経の通り道と関係しながら、頭部全体の状態に影響を及ぼしています。
そのため、蝶形骨のわずかな位置の変化や緊張は、
姿勢や呼吸、感覚の質にまで波及することがあります。
姿勢というと、背すじを伸ばす、骨盤を立てるといった外側の形を思い浮かべがちです。
けれど実際には、姿勢はもっと内側の構造の状態から生まれています。
蝶形骨は頭の中心に位置し、
その傾きや回旋は、首の角度や頭の位置に直接影響します。
頭の位置が変わると、視線の方向が変わり、
胸郭の動きや背骨のカーブ、骨盤の位置関係にも変化が起こります。
たとえば、長時間のスマートフォン操作やデスクワークで、
頭部前方位姿勢の状態が続くと、
蝶形骨にも偏った負荷がかかり
その影響が首や背中、腰にまで広がっていきます。
見た目には大きな歪みがなくても、
身体の内側では常に微調整が起こり、
その積み重ねが慢性的な緊張や疲労感につながることがあります。
蝶形骨の周囲には、目の動きや感覚に関わる神経が集まっています。
視神経をはじめ、眼球運動に関与する神経、顔の感覚に関係する神経などが、
蝶形骨の孔や裂隙を通って出入りしています。
視点が固定され続けたり、目の動きが少なくなったりすると、
この領域に緊張がたまりやすくなります。
その結果として、目の奥の疲れ、まぶたの重さ
焦点の合いにくさといった感覚が現れることがあります。
こうした変化は、単に目の問題にとどまらず、
頭の位置、首の動き、呼吸の深さにも影響し、
全身の感覚バランスを変えていくことがあります。

呼吸は肺や横隔膜だけの働きではありません。
身体の内側では、圧の変化や膜の張力が連動し、
頭部の構造にも影響を与えています。
蝶形骨は、こうした内側のリズムと関係しながら、
ごくわずかに動きをくり返しています。
この動きが制限されると、呼吸が浅く感じられたり、
吸いきれない感覚や詰まり感が出ることがあります。
反対に、頭の奥にスペースが生まれると、
呼吸は自然と深まり、
胸や背中の動きにも広がりが出てきます。
その変化は、自律神経の緊張状態にも影響を及ぼします。
姿勢が崩れ、頭の位置がずれた状態が続くと、
視線の安定感が失われ、
まぶたが重く感じたり、焦点が定まりにくくなったりすることがあります。
同時に、呼吸が浅くなり、
落ち着かない感覚や常に緊張している状態が続くこともあります。
こうした状態は、筋肉だけを見ていても原因が見えにくいことがあります。
蝶形骨のように、意識しにくい構造に目を向けることで、
身体全体の状態を別の角度から捉え直すことができます。
レッスンや講座では、
こうした構造のつながりを身体で感じながら、
動きと感覚の変化を通して理解を深めていきます。
解剖学的な知識と体感が結びつくことで、
姿勢や呼吸、日常の身体の使い方に変化が生まれていきます。
次回は、蝶形骨と顎、骨盤との関係を通して、
頭から全身へと広がる影響について掘り下げていきます。