ピラティスで“鏡を見ない”という選択 〜正確な身体感覚を育てるために〜

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ピラティスで“鏡を見ない”という選択 〜正確な身体感覚を育てるために〜

ピラティスのレッスンに初めて参加された方から、よくこんな質問をいただきます。

「鏡がないのはなぜですか?」と。

 

ヨガやフィットネスのスタジオでは、大きな鏡があるのが当たり前。

自分の姿勢を確認できるのは便利なことのように思えます。

 

でも、ピラティスではあえて鏡を置かないことが多いのです。

今回はその理由について、少しだけ専門的な視点も交えてご紹介します。

 

【1】鏡を見た時点で、身体は“本当のまっすぐ”ではなくなる

たとえば、あなたが四つ這いの姿勢になって、正面の鏡で背中のラインを確認しようとしたとします。

このとき、横を向いた瞬間に、すでに首や背骨はねじれてしまっています。

つまり、「鏡を見て確認する」という行為自体が、正しいアライメント(骨の配列)を崩す原因になってしまうんです。

 

特にピラティスでは、ニュートラルポジションと呼ばれる“本来あるべき身体の位置”を大切にします。

鏡に頼って確認しようとすると、その位置が常にずれてしまう。

正確な動きを身につけたいなら、目に頼るのではなく、身体の内側からの感覚を磨いていくことが重要なのです。

 

【2】“感じる”力を育てるために

私たちの身体には、本来とても優秀なセンサーが備わっています。

関節の位置や筋肉の張り、重心の移動などを感じ取る「固有感覚」です。

 

この感覚を育てることで、視覚に頼らず、正確な姿勢や動きをコントロールできるようになります。

鏡を見ながら動いていると、このセンサーの働きが弱くなってしまうんですね。

 

たとえるなら、地図を見ずに道を覚えるようなもの。

最初は不安でも、何度も繰り返すことで、自分の感覚で正しい道がわかるようになってくる。

それが本当の意味で“自分の身体を自分で扱えるようになる”ということなのです。

 

【3】小脳を使った運動学習を促す

ここで少しだけ脳の話をしますね。

私たちが新しい動きを覚えるとき、大きく分けて二つの学習ルートがあります。

 

ひとつは「大脳を使った意識的な学習」。

これは「頭で理解して、意識して動かす」という方法です。

たとえば「背筋を伸ばそう」と考えて、意識的に姿勢を整えるような感じです。

 

もうひとつは「小脳を使った無意識的な学習」。

これは繰り返しの中で、身体が自然と正しい動きを覚えていく方法です。

 

ピラティスでは、この“小脳系”の学習を重視します。

 

鏡を見て動きを修正するのは、どうしても大脳優位の学習になりがち。

でも、目を閉じたり、視覚情報を減らした状態で練習すると、小脳が働きやすくなり、

やがて無意識のうちに正しい姿勢や動きができるようになっていきます。

 

これは、ピラティスがリハビリや機能改善に強い理由のひとつでもあるんです。

 

【4】「見せる姿勢」ではなく、「機能する身体」を目指す

フィットネスやダンスでは、どうしても“見た目”の美しさが意識されがちです。

でも、ピラティスで大切にしているのは「動ける身体」「快適に生きる身体」をつくること。

 

鏡に映る姿勢が整っていても、実は深層筋が使えていない…

そんなこともよくあります。

 

見た目にとらわれず、身体の内側の動きとつながることで、

結果的に“美しく、機能的”な姿勢や動きが自然と身についていくのです。

 

【まとめ】鏡に映らない力を育てるレッスン

ピラティスでは、「見て確認する」のではなく、「感じて気づく」ことを大切にします。

それは、視覚ではなく、感覚と神経と筋肉のつながりを育てるということ。

そしてそれこそが、ケガを予防し、動きの質を高め、長く快適に生きるための基盤となるのです。

 

鏡がないスタジオは、決して不便な場所ではありません。

むしろ、自分の本当の感覚と向き合える、静かな学びの場所。

あなたの身体の中には、ちゃんと正解が眠っています。

それを引き出すための方法が、ピラティスにはたくさん詰まっているのですよー。

 
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